Okita Yosuke Attitudes

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  • カリブー!

    今朝の空気はキリッとしていたが、ポカポカの陽気も頬のあたりに感じられ、3月半ばのこの時期にふさわしい朝だった。
    僕はいつもより少し早く家を出て、いつもの道を自転車で仕事場まで向かっていた。

    しばらく行った頃、どこかから「カリブー」という声が聞こえたように思えた。
    僕は首を注意深く曲げ、左斜め後ろを振り返った。
    そこには引っ越しの業者さんが2人いて、声をかけ合って荷下ろしをしていただけだった。
    「な~んだ、聞き間違えか~」
    そう思って前を向き直したその瞬間、何かの存在を感じ、急ブレーキを踏んだが、ちょっと遅かった。

    「痛っ」
    「ごめんなさい!」

    「もぅ~気をつけてよ」というような目でにらむ目を僕は知っていた。
    その人は、元勤め先の同僚で、長い付き合いなのに僕のことを「カリブ」とは呼ばずに「置田」と呼ぶ数少ない人だ。
    しかも昨晩の夢にも彼は出てきて、僕のことを「置田」と呼んでいたが、そのことを僕は夢の中で彼に問いただしていた。
    「なんでカリブって呼ばないの?」

    その答えはどうだったか、もう忘れたが、やはり今朝になっても彼は決まりを守ったままだった。

    「なんだ、置田か! 危なっかしい運転するなよ~」

    でも僕はその時、彼の目の中に、もう一人の彼の姿をくっきりと見ることが出来た。

    date:
    2013.6.6

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